ツキノワグマの生態と長野県全体の現状と対策

南箕輪村は、豊かな山林と農地が隣接する自然環境に恵まれた地域です。しかしその環境は、野生動物と人との距離を近づけ、特にツキノワグマの出没が懸念される要因にもなっています。

ツキノワグマとは

ツキノワグマ(学名 Ursus thibetanus、日本亜種 Ursus thibetanus japonicus)は、胸に三日月形の白斑を持つ中型のクマです。

約30~50万年前の氷河期に大陸から日本に渡来し、本州と四国の33都道府県に分布しています。

平均的な大きさは頭胴長110~130cm、体重はオスで約80kg、メスで約50kg。

雑食性で、春は新芽や若葉、夏は果実や昆虫、秋はブナやナラの実を好みます。特に秋は冬眠に備え、栄養価の高い堅果類を集中的に摂取します。

長野県における生息状況

長野県全域では、2020年度の調査で推定約 7,270頭 のツキノワグマが生息しているとされています。ブナ科やミズナラを含む落葉広葉樹林が豊富な信州の自然は、クマにとって重要な生息環境です。

出没状況

近年は餌資源の凶作や気候変動により、山間部から人里近くへ下りてくるケースが各地で見られます。農作物や果樹への被害が発生し、住民の安全確保が課題となっています。

平常年は8月を中心に夏期の出没が多く、大量出没年は秋期の出没が多い傾向があります。

村の対策

南箕輪村では、小沢川や大泉川など川を伝ってクマが出没している傾向がみられるため、クマの出没経路にはライブカメラを設置して、出没時には檻を適宜設置するなど対応にあたっています。

出没要因

秋期におけるツキノワグマの出没件数と堅果類(ドングリ)の豊凶を比較すると、ブナが凶作の年には出没が多い傾向が見られます。

冬眠前に必要な食物が不足した結果、秋期の行動圏が拡大し、里地への出没が増加した可能性が指摘されています。

広域的な対応の流れ

長野県では、ツキノワグマの保護と被害防止の両立を目的に、以下の取り組みを進めています。

  • 特定鳥獣保護管理検討委員会の開催
  • 「対策のあり方協議会」の設置
  • 近隣自治体での予防活動

ゾーニング

伊那市、箕輪町に続き、南箕輪村でもゾーニングの協議を進めており、県に登録手続きを進めています。

基本的に、飛地は主要生息地域、それ以外はすべて排除地域とする予定です。

ツキノワグマ出没時対応マニュアル

令和7年3月31 日に長野県林務部森林づくり推進課から、ツキノワグマ出没時対応マニュアルが発表されていますので、読み解いていこうと思います。

https://www.pref.nagano.lg.jp/yasei/documents/r07manual.pdf

マニュアル作成の目的

本マニュアルは、ツキノワグマによる農林業被害や人身被害の発生が懸念される場合、または既に発生した場合に、関係機関等が迅速かつ連携して対応するために作成されたものです。

有害捕獲が許可される個体

・ 対策を講じても被害を発生させる個体
・ 防除地域内に繰り返し出没する個体
・ 排除地域に出没し人身被害を発生させる恐れがある個体

緊急時の対応(クマが住宅街に出没し、人の生命・身体に危険が生じた場合の対応)

緊急時についてのみ、捕獲許可権限は市町村長に移譲され、速やかに危険な個体を排除できます。

現場の警察官が、人の生命・身体等に対する危険が切迫しその時点で捕殺しなければならないと判断した場合、現場のハンターに猟銃での捕殺を命ずることができます。

なお、人の生命・身体に対する極めて高度な危険が迫っている場合は、警察官の命令によらず、先着したハンターの判断で、猟銃による捕殺は妨げられません。

緊急時以外の対応

命の危険が迫っている緊急時以外ですが、原則、次の3条件を満たせることを前提に、学習放獣に務めることになっています。

① 市町村・地域住民の理解
② 放獣対象地
③ 放獣に当たる人員確保

しかしながら、下記の場合は、学習放獣の効果が期待できないため、学習放獣は原則不要であるとしています。

・ 耳標(耳タグ)等により加害行為が複数回と推定できる個体。
・ 捕獲許可申請時の加害想定個体の特徴(被害発生場所の足跡、爪跡等の痕跡、周辺の目撃情報等)と捕獲個体の特徴に明確な相違がない場合

さらに、ツキノワグマ出没特別警報発出時には、学習放獣を一時休止(捕殺)できることになっています。

錯誤捕獲

現場ではよくある、錯誤捕獲については放獣が原則となっています。

ただし、安全な放獣が困難な場合や、放獣しても復帰が見込めないと麻酔技術者が判断した場合は、緊急捕獲(市町村許可)の対象とすることができます。

さらに、ツキノワグマ出没特別警報発出時里地周辺で錯誤捕獲防止措置を講じたわなにかかった個体についても、緊急捕獲(市町村許可)の対象とすることができます。

おわりに

南箕輪村を含む上伊那地域は、豊かな自然と人々の生活が隣り合わせに存在する場所です。

自然と人が共に生きる未来を守るため、地域全体での理解と協力を深めてまいりましょう。