2019年10月に上陸した台風19号(東日本台風)によって、国道361号・権兵衛峠道路においても、道路の一部が崩落し、全線で通行ができなくなるなどの影響がありました。

国の直轄権限代行による災害復旧
権兵衛峠道路は、伊那地域と木曽地域を結ぶ重要な路線であり、早期復旧が求められましたが、急峻な地形のため高い技術力が必要とされました。
2013年施行の「大規模災害からの復興に関する法律(復興法)」に基づき、長野県の要請を受けて、国が直轄権限代行により災害復旧事業を2019年10月29日から実施されました。
台風19号と通行止め
2019年10月、台風19号により関東甲信地方や東北地方を中心に記録的な大雨が降り、権兵衛峠道路においても被害が発生しました。
10月20日には、権兵衛トンネル伊那側坑口付近で道路が崩壊し、全面通行止めとなりました。
ライブカメラ

10月19日のライブカメラの様子ですが、橋の左側の地面が崩落しているのが分かります。
この後、橋梁の一部が崩壊していきます。
崩壊原因
地質調査の結果、橋台背面は表層が崖錐堆積物で、その下に粘板岩やチャートが重なる構成であることが確認されました。
崩壊箇所では、崖錐層が湿潤状態で湧水も見られました。
台風による大雨で地下水が増加し、透水性の違いによって地下水が滞留したことで、橋台付近の地盤が不安定となり、表層土砂が流出したと考えられます。
図は飯田国道事務所の資料によるもので、図面は当時配布された資料によるものです。
https://www.cbr.mlit.go.jp/kikaku/2021kannai/pdf/re13.pdf


応急復旧工事
応急復旧工事が完了し、被災から約2か月後の2019年12月19日、権兵衛峠道路は片側1車線での通行が再開されました。
復旧事業の完了
2車線の確保に向けた工事が進められ、被災から約1年後の2020年10月8日には、権兵衛峠道路は2車線での通行が再開されました。
その後、橋台前の斜面に複合補強土壁と法枠工を施し、2021年3月26日、国による権限代行での災害復旧事業は完了しました。
地下水
災害の要因の一つとされる地下水については、最大で毎分338リットルの排水が確認され、湧水が常に供給されていることが分かりました。
旧権兵衛峠道路も土砂崩落
なお、旧権兵衛峠道路も台風19号の影響で、いくつもの箇所が土砂崩落しました。

