南箕輪村大泉の鹿頭祭(かとうさい)について

毎年7月の日曜日に行われる「鹿踊り」は、別名「鹿祭(ししまつり)」「鹿頭祭(かとうさい)」とも呼ばれ、地域に伝わる伝統的な祭礼です。

起源

その起源は永禄元年(1558年)にさかのぼります。当時、この地域は深刻な干ばつに見舞われ、人々は雨乞いを行いました。すると雨が降り、田畑を潤したことから、感謝の意を込めて鹿の頭を神に奉納したのが始まりと伝えられています。

形式

当初は実際の鹿の頭75頭分を神社に奉納したとされますが、時代とともに簡略化され、現在ではお稚児が「冠物(かんぶつ)」と呼ばれる鹿頭をかぶって奉納する形式となっています。

奉納の行列は、太鼓の担ぎ手とたたき手、鹿頭をかぶったお稚児、そして「警固(けいご)」と呼ばれる警護役で構成されます。警固は陣笠をかぶり、帯刀し、上下の礼装に身を包んで行列を警護します。奉納は太鼓に合わせ、左回りに三度まわって終わるのが習わしで、古くから伝わる作法に則って厳かに行われます。

担当地区

この行事は、伊那市・箕輪町・南箕輪村にまたがる天竜川沿いの6つの地区──「福」「大」「富」の文字を含む縁起のよい名をもつ地区が、毎年交互に担当しています。

2025年は西側にあたる大泉・大泉新田・大萱・富田の地区が奉納を担い、2026年は天竜川東側の福与と福島が担当する予定です。

南箕輪村の無形文化財に指定

この鹿踊りは、昭和56年に南箕輪村の無形文化財に指定されました。お稚児に選ばれた子どもは、「健やかに、たくましく育つ」と言い伝えられ、地域の子どもたちにとっても誇りある行事となっています。子どもたちは鹿頭に見立てた飾りをかぶり、太鼓やほら貝の音に合わせて境内を練り歩き、その姿は歴史と祈りを今に伝えています。

南箕輪村の文化財一覧

南箕輪村の文化財は下記のとおりとなっています。

番号名称種類内容年代(時代)
1新四国霊場有形史跡88江戸時代 嘉永元年(1848)
2十一面観音有形彫刻1伝:平安時代
3大般若経有形木版印刷600巻明治30年(1897)
4大宗館文庫有形古文書・書画・和書等4,500点余江戸時代初期〜明治時代中期
5エドヒガン桜有形植物1樹齢約270年(推定)
6殿村小幡宮社叢有形植物多数樹齢200年〜400年(推定)
7恩徳寺大銀杏有形植物1樹齢約360年(推定)
8三十三観音有形石仏33体江戸時代
9富士塚有形史跡1伝:江戸時代 元文5年(1740)
10大和泉神社本殿及び療守稲荷社殿有形神社建築2棟江戸時代 文政11年(1829)
11不動明王有形彫刻3体江戸時代中期
12十二神将有形彫刻11体江戸時代 文化13年(1816)
13大和泉神社鹿踊り無形雨乞い祭1団体伝:戦国時代 永禄元年(1558)
14殿村小幡宮朱印状有形古文書9通江戸時代 慶安2年(1649)〜万延元年(1860)
15蔵骨器有形灰釉陶器1平安時代(850年頃)
16御射山社(鳥居跡)有形史跡1伝:平安時代 大同4年(809)
17八体文付有孔鍔付土器有形縄文式土器1縄文時代中期(紀元前2500年頃)
18コウヤマキ天然植物1樹齢約700年(推定)
19民謡「御嶽山」無形唄・お囃子・踊り1団体伝:江戸時代 元禄年間(1688〜1704)