南箕輪村の人口増についての考察2「土地の評価額が低い」

南箕輪村の人口増について考察しています。

考察2「土地の評価額が低い」

「南箕輪村って税金が安いって聞きますけど本当ですか?」
「えっ!どこで聞いたんですか?」
「えっ!結構聞きますよ〜」

そんな会話があったことをきっかけに、村の税金について調べる機会がありました。

どの税金が安い?

税金と言っても、所得税、法人税、住民税などなど、その数は軽く50種類はあります。最近話題に上がる税金はやっぱり消費税でしょうか。

でも消費税に代表される消費課税の金額は、全国一律なので、今回の税金が安い!理由の中には入ってきません。

それでは、いったいどの税金が安いのでしょうか?

住民税?

住民税が安い!ってことになるとすごい分かりやすいんですが、住民税は長野県内は、ほぼ一緒なので、これではありませんね。

事業税?

事業税が安い!ってことになるとありがたいですが、これも長野県内はほぼ一緒なので、これでもありません。ちなみに個人事業税は課税所得金額の3〜5%です。

固定資産税や相続税?

土地の評価額が他と比べて安ければ、固定資産税や相続税などの税金は安くなります。もしかしたらコレかもしれませんね。

土地の評価額

全ての土地評価額が定まっていて公表されている訳ではないので、長野県が公表している「令和2年の市町村別・用途別平均価格及び変動率一覧表」の土地評価額を、まずは調べてみました。

全用途標準値数評価額変動率(%)
長野市7472,000-0.1
松本市5364,1000.8
軽井沢町855,9005.4
茅野市548,800-1.4
諏訪市648,000-1.5
下諏訪町345,700-1.7
岡谷市644,500-1.7
上田市1743,800-0.5
塩尻市941,3001
佐久市940,900-0.1
飯田市1138,800-0.8
中野市537,700-0.7
小布施町436,1001.1
須坂市1034,300-0.6
千曲市833,700-1.8
坂城町328,700-1.9
駒ケ根市528,600-2
東御市428,100-1.2
伊那市627,700-1.8
山ノ内町327,700-2.1
安曇野市1626,2000.4
箕輪町324,700-2
木曽町324,500-3
小諸市523,700-0.5
富士見町323,400-2.3
辰野町321,700-2.8
飯山市421,400-1.2
松川町321,000-1.5
御代田町320,700-0.5
高森町319,600-1.4
宮田村219,100-1.3
松川村217,600-0.5
小海町317,500-2
野沢温泉村217,4003
大町市617,300-1.1
南箕輪村315,9000.2
上松町315,700-3
飯島町314,500-2.4
池田町313,300-0.4
信濃町311,400-2.3
飯綱町211,100-1.8
白馬村310,10012
中川村25,000-2.4

南箕輪村の全用途の評価額は15,900円/㎡で、下から8番目で、かなり下の方に位置していることが分かりました。

最新の土地評価額

全用途の評価額について、上伊那で抜き出して、さらに過去からのデータも加えて推移を見ていきましょう。

 2017年2018年2019年2020年2021年2022年
駒ヶ根市30,600円29,800円29,200円28,600円27,940円27,380円
伊那市29,300円28,700円28,200円27,700円27,183円26,683円
箕輪町26,500円25,800円25,200円24,700円24,100円23,566円
辰野町23,800円23,000円22,300円21,700円21,033円20,466円
宮田村19,900円19,600円19,400円19,100円18,800円18,500円
南箕輪村16,000円15,900円15,900円15,900円15,833円15,833円
飯島町15,700円15,300円14,800円14,500円14,076円13,733円
中川村5,400円5,300円5,100円5,000円4,890円4,775円

地価公示から評価額をみてみると、南箕輪村は上伊那の中でも比較的安いことが分かりました。これが、税金が安い!と言われる一つの理由なのかと推測します。

地価低下の変動率

また、調べている中で感じたのは、地価低下の変動率がプラスだったり、小さかったりするということです。地価の低下が少ない自治体となっており、将来に渡っての不安が緩和される状況になっています。

なぜ土地の価格が安いのか

それでは、なぜ土地が安いのか、その理由を考えていきます。

水が無かった

南箕輪村には生活に必要な水が手に入らなかった地域がありました。

下の図は、南箕輪村の村誌から引用したものですが、村は伊那盆地(伊那谷)が最も開けたところに位置しています。

また、地元では伊那盆地と呼ばれず、伊那谷(いなだに)と呼ばれています。なぜ、そう呼ばれているのか。それは盆地というよりかは、谷と表現した方が適切な地形だからです。

東に北岳(3,193m:富士山の次に高い)や間ノ岳(3,189m:富士山の次の次に高い)などの南アルプス、西に中央アルプスに囲まれていますので、平坦な盆地というよりかは、谷みたいな地形になっているのは想像しやすいかと思います。

扇状地に開けた南箕輪村

そのような伊那谷にあって、南箕輪村は扇状地に開けた村です。

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扇状地

扇状地とは、山地を流れる河川が運搬した砂礫が、谷口を頂点として扇状に堆積した地形である。(中略)扇状地を形成している堆積物は大小さまざまな大きさの礫を多く含んでおり、大変水を通し易い。そのため、扇央部では河川の水のかなりの部分が地下へと浸透してしまい、地下水となる。この結果、扇央部にある地上の河川の流量は減り、場合によっては水を失い、地上の川が水無川となることもある。

扇状地では、水が地下に浸透してしまい、地表では水が無くなり、川が無くなってしまうこともあるそうで、南箕輪村を東西に流れる大泉川が途中で途切れている話は、地元では有名です。

最大600mの堆積

東西が逆なのでちょっと分かりづらいですが、この断面図の塗りつぶしてあるところが、元々の地面で、ロープのようにかかっているのが、今現在の地面となっています。

一番西側(右側)をみてみると、600mも水が浸透しやすい土壌があることで水が浸透し、地表から水が無くなってしまいやすくなっています。

浸透した水は東側から出てくるため、ワサビの栽培などが、南箕輪村の中でも行われております。

さらに、この堆積している土壌は御岳山の噴火による軽石層であり、その上に土石流が運搬された形で、むちゃくちゃ透水性が高いということも分かりました。

そう。この図から分かることは、西側(右側)の地域ほど水が無いということです。

南箕輪村で一番人口増加率の高い南原地区は、村の南西に位置し、水量が比較的多い大泉川からも離れており、その後の西天竜一貫水路の恩恵も受けれず、水が無くて開発が遅れた地域です。

水問題が解決された昭和40年以降は、ロケーションが良く、周辺と比較して土地の価格が安かったため、人口が増えました。

不毛の大地を切り開いた先人たち

木曽から水路を引いた(明治8年)

北沢川から水を引こうと交渉したが、小沢や山寺などの村々に水利権があって難しかったため、木曽の奈良井川支流の白川から権兵衛峠を越えて、北沢の支流に落とすことで、水量が増えるから、水をもらうという奇抜な方法で水を得た。

木曽からの水路「木曽山井筋」は12Kmにもわたり、幾多の困難と犠牲の上に完成した。この水で22.5ヘクタールの水田を潤すことができた。この水路は為替水(かわせみず)とも呼ばれている。

横井戸を掘った

横井戸を掘って水を求めることもしたが、成功させるには相当の技術や資産、運が必要であったため、破産した人も結構いた。

西天竜一貫水路を整備した

伊那谷を南北に流れる天竜川には羨ましいくらいの水が流れているため、それを利用できないかと考えた。

多数の利権との調整や多額の費用、技術力など様々なハードルを乗り越えて、1928年に西天竜一貫水路が完成した。

現在も村のいたるところに見られる、水を均等に振り分ける「円筒分水」は、写真撮影のスポットにもなっています。

井戸を掘った(南原地域)

西天竜一貫水路の恩恵を授かれず、南原地域は飲用の水も皆無で、一番最後まで人が住めないエリアだった。

昭和22年に、1ヶ月かけて15間(27.3m)の井戸を掘ったところ、地下水脈を掘り当て、飲用水を確保することができた。

昭和34年に、大型井戸設置のため井戸を掘ったが、残念ながら水が出ず失敗した。

昭和40-42年に、地下100mまで掘ったところ、水が溢れ出たため、完全な水道施設を作ることができた。

最後に

今回の考察については「南原の歴史と開拓(越後幸益)」を元に実施いたしました。貴重な資料をありがとうございました。

人口増の考察と関連する部分のみ、ここでは簡略化して記載しています。

考察の続き

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