南箕輪村で採集された、とても小さなハチが、新種として正式に発表されました。
その名は、Lagynodes tsukumogami(ラギノデス・ツクモガミ)。日本語名は「コモンジョバチ」です。
2025年12月に発表された日本昆虫分類学会の論文では、日本に生息するラギノバチ属の仲間を調査し、国内から6種を確認しています。そのうち5種が、これまで知られていなかった新種でした。コモンジョバチは、その新種の一つです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsystent/31/2/31_251/_pdf/-char/en
南箕輪村の1匹が新種の基準に
論文によると、コモンジョバチの標本は、2017年4月12日に南箕輪村で採集された雄1匹です。
体長はわずか1.18ミリメートル。茶色い体に、淡い黄色の触角と脚を持っています。目は非常に小さく、前翅も長さ0.08ミリほどしかありません。羽が完全に発達していない「短翅型」のハチです。
この1匹は、単に南箕輪村で見つかった昆虫というだけではありません。
新種を正式に発表する際には、その種の特徴を示す基準となる標本を指定します。これを「ホロタイプ」、日本語では「正基準標本」といいます。
つまり、南箕輪村で採集されたこの1匹が、今後世界中の研究者がコモンジョバチを調べる際の基準になるということです。
標本は現在、茨城県つくば市にある農業・食品産業技術総合研究機構に収蔵されています。
古い本から見つかった「ツクモガミ」
このハチには、発見の経緯にも面白い特徴があります。
論文には、標本が非常に古い本の中から見つかったと記されています。
学名の「tsukumogami」は、日本語の「付喪神」に由来します。付喪神とは、長い年月を経た道具などに魂や神が宿るという、日本に古くから伝わる考え方です。
古い本の中から現れた小さなハチに、「ツクモガミ」という名前が付けられたわけです。研究者の遊び心と、日本文化への敬意を感じる名前です。
日本語名の「コモンジョバチ」も、おそらく古い文書を意味する「古文書」を連想させる名前です。
現在確認されているのは、この1匹だけ
さらに驚くのは、論文発表時点で、コモンジョバチとして確認されているのは、南箕輪村で採集されたこの雄1匹だけだということです。
雌は、まだ発見されていません。分布についても、現時点では「本州・長野県」とされているだけです。
ただし、世界に1匹しか生息していないという意味ではありません。
体長が約1ミリと極めて小さく、羽もほとんど発達していないため、人の目に触れる機会が少なく、これまで見つけられていなかった可能性があります。
南箕輪村の土の中や落ち葉の下、古い建物や書籍の周辺などに、ほかの個体がひっそりと生息しているのかもしれません。
身近な場所にも、まだ知られていない生き物がいる
新種の発見と聞くと、海外のジャングルや深海など、人がほとんど立ち入らない場所を想像します。
しかし今回は、私たちが暮らす南箕輪村で見つかった1匹が、新種として学術的に記録されました。
南箕輪村には、田畑、森林、河川、屋敷林など、多様な自然環境があります。その中には、まだ名前の付いていない生き物や、生態が分かっていない生き物が残されている可能性があります。
体長わずか1.18ミリの小さなハチですが、南箕輪村の自然の奥深さを感じさせる、興味深い発見です。
古い本の中から現れ、南箕輪村の名とともに学術論文に記録された「コモンジョバチ」。
今後、村内や長野県内で新たな個体が見つかり、その生態が明らかになることを期待したいと思います。
-23.jpeg)
-22.jpeg)