「養護老人ホーム」を取り巻く大きな変化

令和7年度、南箕輪村では「老人保護措置費」として約1,180万円を支出しています。対象となったのは養護老人ホーム5人、特別養護老人ホーム3人の計8人ですので、「8人で1,180万円もかかるの?」と思われるかもしれません。

措置という制度

まず知っていただきたいのが、「措置」という制度です。

養護老人ホームは、一般的な介護施設とは少し性格が違います。原則65歳以上で、経済的な事情や家庭環境などによって自宅で生活することが難しい方について、市町村が必要性を判断して入所を決定します。また、虐待など「やむを得ない事由」により通常の介護サービス利用が難しい場合には、特別養護老人ホームへの措置入所もあります。

つまり、本人が施設を選んで契約する通常の入所とは異なり、行政がその方の生活を守るために行う、最後のセーフティーネットの一つです。

費用負担は

この費用は誰が負担しているのでしょうか。

以前は国庫負担制度がありましたが、平成17年度から一般財源化され、現在は基本的に措置を行った市町村が支払います。一方で、その財源については地方交付税の算定に組み込まれています。

約1,180万円を8人で単純に割れば、1人当たり年間約148万円、月額約12万3,000円です。措置費には単なる部屋代だけではなく、食事などの生活費や施設職員の人件費なども含まれます。

なお、入所者本人にも所得などに応じた費用負担があります。

高齢者は増えていますが入所者は減っています。

ここでもう一つ、養護老人ホームを取り巻く動向として、入所者の減少があります。

高齢者人口は増えているのですから、老人ホームの需要も増えそうに思えます。

しかし、養護老人ホームは「高齢者が増えれば利用者も増える」という施設ではありません。

介護保険制度が始まって以降、特別養護老人ホームやグループホームなどの介護サービスが整備され、さらにケアハウス、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など、高齢者の「住まい」の選択肢も大幅に増えてきました。

なにより在宅でも訪問介護やデイサービスなどを組み合わせて暮らせるようになっています。

かつてであれば養護老人ホームが受け皿となっていた高齢者の一部が、現在では別の制度や、自宅での生活を選べるようになったわけです。

さらに養護老人ホームは、本人と施設との直接契約ではなく、市町村が必要性を判断して「措置」する仕組みです。このため、施設側が空室を埋めようとして自由に入居者を募集できる施設とは根本的に経営構造が異なります。

養護老人ホームの今後

入所者が減っても、施設を維持するための建物管理費や一定数の職員配置などの固定費は簡単には減らせません。

例えば50人を前提として運営してきた施設が30人になったからといって、建物を6割の大きさにしたり、職員や夜間体制をそのまま6割にしたりできるわけではありません。

結果として、入所者が減るほど一人当たりの施設運営コストが上昇し、経営が苦しくなります。

南箕輪村でも老人保護措置費約1,180万円とは別に、養護老人ホームに対する赤字補填として約220万円を支出しています。合わせると約1,400万円です。

もちろん、養護老人ホームは経済的困窮や家庭環境などさまざまな事情を抱えた高齢者を守る重要なセーフティーネットであり、単純に「利用者が減ったから廃止」という話にはできません。

一方で、入所者が減少する中で現在の施設規模を維持し、その赤字を自治体が毎年補填し続けることが持続可能なのかという問題も避けて通れません。

入所者の減少と赤字補填という現実を踏まえ、これからの地域に必要な養護老人ホームのあり方を考える時期に来ているのではないでしょうか。