公益社団法人全国防災協会主催により、令和7年度災害復旧促進全国大会が砂防会館で開催されました。
国土交通省 災害対策概況説明
1.近年の災害発生状況
令和7年は、カムチャッカ半島沖地震やトカラ列島地震をはじめ、台風22号・23号による八丈島など離島での災害対応が相次ぐ年となりました。
令和4年から6年の3年間では、全国1,771自治体のうち実に848自治体で災害が発生し、何らかの災害対応を実施しています。
2.技術系職員の不足
全国の自治体においては、災害対応を担う技術系職員の不足が深刻化しています。
技術系職員が0人の団体は440に上り、全体の約5割の自治体が5人以下の体制にとどまっています。
このため、被災状況調査や査定設計、復旧工事の実施において、外部支援や技術的助言が不可欠な状況となっています。
3.国による技術的支援
国土交通省では、被災自治体の実情に応じ、次のような多様な支援を実施しています。
- 災害緊急調査(主に都道府県事業を対象)
- 災害復旧技術専門家派遣(主に市町村を対象)
- 技術的助言
- 簡素化査定・早期確認型査定の導入
- 査定設計委託費への補助
- 事業マネジメント委託費への補助(今後拡充予定)
これらの取組により、迅速かつ的確な復旧・復興を支援しています。
4.TEC-FORCEの活動
国土交通省の「TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)」は、発災直後から現地に入り、次のような活動を展開しています。
- 被災状況の把握
- 道路啓開・緊急排水
- 避難生活支援(電源・給水など)
- 人命救助や被災者生活の支援
また、衛星(JAXA)やヘリコプターを活用し、空からの被災状況把握も実施しています。
5.今後の体制強化
大規模災害の頻発化を踏まえ、国土交通省では、あらゆる力を結集した災害対応体制の強化を進めています。
美里町 令和7年8月豪雨災害の概要
1.災害の発生状況
令和7年8月の豪雨では、美里町全域で記録的な集中豪雨に見舞われました。
記録的短時間大雨情報は15回にわたり発表され、最大1時間雨量は143mm、12時間の累計降雨量は531mmに達しました。
7月に南箕輪村で降った大雨が1時間に51mmでしたので、あれの3倍と思うと桁違いの雨量です。
2.避難情報と対応経過
8月10日17時に「高齢者等避難」が発令され、続いて1時45分には「避難指示」、4時45分には「緊急安全確保」が発令されました。
最大で6地区において孤立集落が発生し、町職員が食料や医薬品の運搬を行うなど、現地支援活動が続けられました。
3.被害の概要
- 道路では法面崩落やがけ崩れにより家屋倒壊が発生
- 複数の橋梁が崩落
- 河川護岸の決壊
- 土砂災害による宅内への土砂堆積や越水被害
これらの被害箇所は町内全体で 793か所 に上り、被害総額は 約222億円(令和7年9月時点) に達しました。
人的被害としては、重軽傷者2名が確認されています。
4.応急・復旧対応
町では発災直後から、以下の対応を順次実施しました。
- 応急対応および道路・インフラの緊急復旧
- 公費による家屋解体
- 災害廃棄物の処理
- 農地・農業用施設の復旧
- 被災者向け仮設住宅の整備
5.今後の見通し
本災害による被害は、熊本地震を上回る規模に及びました。
農地復旧に関しては、熊本地震では5年を要したことを踏まえ、町長は今回は10年規模の長期的な復旧計画が必要になるかもとの発言がありました。
決議
一 近年の災害の頻発化・激甚化により、全国各地で公共土木施設が被災している状況、資材価格・人件費高騰等の影響などを令和8年度当初予算に適切に反映し、公共土木施設の速やかな復旧を図るために必要な災害復旧事業に係る予算の増額、継続的・安定的な確保を図ること
一 改良復旧等の再度災害防止対策の強化に向けた制度拡充、被災自治体の負担軽減のための災害復旧事業に係る事業監理業務に対する財政支援を行うこと。また、全国的に渇水が深刻化したことを踏まえ、水道容量確保のため、ダム堆砂の撤去要件の緩和を図ること。
一 災害復旧事業の実施にあたっては、被災自治体の負担を軽減しつつ、事業の迅速化を図るため、デジタル技術の活用や災害査定の簡素化・効率化を推進すること。また、事業の実施期間については、被害の特徴や規模に配慮し、適切な対応を行うこと。
一 大規模広域災害が発生した際に、地方公共団体と連携し迅速に応急対応や災害復旧が実施できるよう、TEC-FORCE等の体制強化や災害対応資機材の充実並びに活動環境・処遇の改善を図ること。
一 災害復旧等の迅速かつ円滑な実施のため、地方整備局等の組織、定員の拡充など、必要な体制確保を図ること。また、官民が一体となり、教育機関等とも連携し、将来の土木系人材の確保に努めるとともに、災害復旧実務に精通した人材や組織の活用、自治体間での人的支援等、被災した地方公共団体への支援体制についても確保すること。
一 気候変動の影響により頻発化・激甚化する水災害に備える流域治水の取り組みや、切迫する大規模地震に備える公共土木施設の耐震化など、ハード、ソフト対策が一体となった事前防災対策を強力に推進すること。
一 第一次国土強靭化実施中期計画の推進に向け、必要・十分な予算を確保するとともに、これまでの資材価格・人件費高騰等の影響も適切に反映し、計画書年度として令和7年度補正予算に重点的に措置すること。
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