大芝高原のアカマツが、松枯れによる被害が急拡大していることを受け、植林をした先人の思いを活かすために、木材として利用できるうちに主伐していく決断をしました。
今後、計画的な伐採と植林を実施していくにあたり、これまでの経緯と今後の進捗について、お知らせしていきます。
松枯れの状況
大芝高原みんなの森にあるアカマツについては、平成18年から薬剤の樹幹注入を実施し、その保全に努めてきました。薬剤の樹幹注入は一定の成果をあげてきましたが、複数回の薬剤注入は保全ではなく、松枯れのリスクを伴うことも分かっているため、継続していくことは難しいのが現状です。
この動画は大芝高原みんなの森を2022年10月にドローンで撮影したものです。見ていただくと、白くなっている木を多く確認できると思います。これが松枯れです。
大芝のアカマツの松枯れの要因は、松くい虫被害によるものです。加えて、遷移*の進行や今後松くい虫被害が顕著化すると、気象害のリスクも高まります。
遷移(せんい; 英語ではsuccession)とは、ある環境条件下での生物群集の非周期的な変化を指す言葉である。たとえば、野原に草が伸び、そのうちに木が生えてきて、いつの間にか森林になるような変化がそれに当たる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%B7%E7%A7%BB_(%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6)
松枯れを防ぐ手段として、ヘリコプターやドローンにより、薬剤の空中散布を行なう手法が残されておりますが、大芝高原の周辺には民家や牧場も多く、実施は困難と判断しました。
令和元年度に実施した「大芝村有林整備基本計画作成業務」「大芝村有林アカマツ資源活用基礎調査」の結果では、2045年にはアカマツは衰退する&10年以内に壊滅的な状況になる可能性は否定できないことが示されています。
このような背景から、全て枯れてしまい木材として利用できなくなる前に、アカマツを主伐していく決断しました。
2022年6月の議会においても、加藤議員からの一般質問「森林・環境政策について」の中で、大芝高原みんなの森の樹種転換について、回答しています。
村民で育ててきた森
大芝高原のアカマツはその殆どが村民の皆さまが植林して育ててきた人工林です。
愛着を持っている方が大勢いらっしゃることがわかっている中で、主伐する決断をしましたので、丁寧に慎重に進めていかなくてはなりません。
アカマツの材木利用
思い入れのあるアカマツですので、伐採後は、最大限木材として村内に形を変えて残るようにしてまいる方針です。
過去、大芝高原は森林ではなくはらっぱでした。
約130年前に、南箕輪尋常小学校の校長先生であった福澤桃十先生の働きかけにより、将来の学校建設のための木材を育てるために植林活動が始まり、今に至っています。
大芝高原には13,000本のアカマツがありますが、用材としてランク付けをした調査では、下記のとおりとなっています。
- AA(上級)ランク:5%
- ABランク:21%
- BAランク:10%
- BBランク:24%
- Cランク:29%
- Dランク:6%
- Eランク(枯損):5%
2022年にはAAランクの木材が、国重要文化財建造物である諏訪大社上社本宮に利用されました。素晴らしい木材が大芝に存在しています。
そこで、可能な限り大芝高原のアカマツについては、先人の想いを未来へつないでいくためにも、材として利用してまいります。
現在研究、検討しているものは、学校給食センター、学校の改築、机の天板、役場の改修、カウンターテーブル、子ども用のおもちゃ、地域公園のベンチ、ウッドチップ など様々となっておりますが、皆さまもアイディアがあればぜひお寄せください。
植林を実施
ゼロカーボンの観点からも、主伐を進めたあとは、植林を進めてまいります。
この植林活動については、ぜひ村民の皆さまのお力をお借りしたいと考えています。
植林した木々を自分や村の成長とともに、末長く見守っていただくことで楽しみだけでなく、村への愛着やつながりをつくっていってもらえればと願っています。
2025年2月に村政150周年を迎えますが、200周年に向け大芝高原を舞台とした、50年の森林循環事業のスタートにもしたいと考えています。
どのような森林にしていくか、何を植林するかなどは、現在「大芝高原森林づくり計画」を策定しています。
この計画をもとに、村民の皆様に説明しながら植林を進めてまいります。
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2023年1月19日 文責 藤城
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