2023年末の12月22日に、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が、2050年までの地域別の将来推計人口を公表しました。
将来人口推計は概ね5年ごとに発表されているデータで、各自治体の基本計画等もこのデータを基にしているものが少なくなく、一定の信頼が寄せられているものです。
https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp_zenkoku2023.asp
ありがたいことに、南箕輪村は2020年と2050年を比較して、人口が増加している77市町村の一つに選ばれています。
しかしながら、南箕輪村単独では、地域は成り立ちません。
定住自立圏を形成している伊那市や箕輪町、そして同じ経済圏である上伊那(伊那市、駒ヶ根市、辰野町、箕輪町、飯島町、南箕輪村、中川村、宮田村)の発展が欠かせません。
今回調べたところ、上伊那地域(特に定住自立圏)の将来人口推計に、人口だけみると劇的な改善が見られましたので、ここに報告します。
また、その裏で募る危機感についても触れていきます。
2020年国勢調査
将来人口推計発表前の2020年に実施された国勢調査の結果では、上伊那の人口動態に改善傾向がみられていました。
2005 | 2010 | 2015 | 2020 | |
人口(人) | 192,703 | 190,402 | 184,305 | 179,892 |
人口増減率 | ▲1.2% | ▲3.2% | ▲2.4% |
2010年度から2015年度における人口減少率が3.2%だったのに対して、2015年度から2020年度は表が示すとおり、2.4%に改善しています。
上伊那の人口減少率「2.4%」は、概ね長野県全体と同程度です。
年齢構成の問題は一旦脇に置けば、将来見通しはむしろ改善傾向にあると、本稿をお読みいただければ、その感触を共有いただけるはずです。
2018年と2023年と比較した将来人口推計の変化
将来人口推計の結果について、2018年と2023年を比較し、5年間でどの程度改善したのかについて
- 南箕輪村
- 定住自立圏(3自治体:伊那市、箕輪町、南箕輪村)
- 上伊那地域(8自治体:伊那市、駒ヶ根市、辰野町、箕輪町、飯島町、南箕輪村、中川村、宮田村)
の3パターンでみていきます。
1 南箕輪村
まずは、南箕輪村単独で、2025年から2045年までを比較した変化を見ていきます。
2025年
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2025年は、全世代が5年前2018年の発表より、数値が改善しており、特に20歳から39歳までの人口増加が622人と際立っています。
2045年
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2045年は、こちらも全世代の数値が改善しており、特に40歳から59歳までの人口増加が525人と最も多い結果となっています。
また、全体で1,390人の増加になっていますが、2025年と比較すると残念ながら若い世代の増加率が低くなっています。
全人口は14,790人から16,180人に増加しており、率に換算すると9.40%ほど増加しています。
長野県全体も今回3.01%ほど人口が増加していますので、人口だけみると、県全体よりも6%以上改善している自治体となっています。
2 定住自立圏(伊那市、箕輪町、南箕輪村)
次に、伊那市、箕輪町、南箕輪村と構成する定住自立圏でみていきます。
2025年
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2025年は、全体では3,000人弱の増加となっています。
南箕輪村単独と同様に、20歳から39歳までの人口増加が際立っており、大変良い結果と考えられます。なお、重要なファクターである0-4歳のマイナス176人が気になるポイントです。
2045年
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2045年は、全体で9,502人の増加となっています。
こちらも全世代の数値が改善しており、特に40歳から59歳までの人口増加が3,272人と最も多い結果となっています。
全人口は80,092人から89,594人に増加しており、率に換算すると11.86%ほど増加しています。
これは南箕輪村単独より増加していることになり、特に箕輪町の20歳未満の数字の向上は大変素晴らしい結果となっています。
増加率を出してみると、伊那市(10.1%)と箕輪町(18.7%)は、南箕輪村(9.40%)より多い結果となっています。
人口だけの視点でみれば、南箕輪村の人口増加が話題になった際は伊那と箕輪の方がすごいと、皆さんもお伝え願えればと思います。
3 上伊那(伊那市、駒ヶ根市、辰野町、箕輪町、飯島町、南箕輪村、中川村、宮田村)
最後に上伊那をみていきましょう。
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2045年では、133,221人から145,312人と、12,091人の増加であり、率にすると9.08%の増加となっています。
今回、5年前の推計との比較や、長野県全体の動向との比較をした結果、人口だけみれば、大きな改善がデータで示されました。
次から、さらに分析を進めます。
出生数、若い世代、75歳以上年齢の分析
日本は世界に先立って少子高齢化社会を迎えており、団塊の世代が75歳以上となり、その人数が2,000万人を超える超高齢化社会の中で大変難しい国家運営が求められています。
人は75歳を過ぎる頃からは、自立の度合いに変化が生じやすく、支えられる側に立つ方の割合が急激に増えていきます。
そのため、これから彼らを支えていく世代、ここでは出生数(0-4歳)や若い世代の状況を分析していくことはとても重要な視点と考えています。
出生数(0-4歳の増減率)
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2023年発表データでは、2025年の767人から2045年には720人へと47人減少しており、減少率は6.1%です。
2018年発表データでは、2025年の765人から2045年には679人へと86人減少しており、減少率は11.2%です。
出生数に関するデータも南箕輪村は改善傾向が見られています。
若い世代(15歳-44歳)
2023年発表データでは、2025年の5,668人から2045年には4,981人へと687人減少しており、減少率は12.1%です。
2018年発表データでは、2025年の4,979人から2045年には4,344人へと635人減少しており、減少率は12.8%です。
若い世代に関するデータもわずかですか改善傾向が見られています。
75歳以上
2023年発表データでは、2025年の2,212人から2045年には2,788人へと576人増加しており、増加率は20.7%です。
2018年発表データでは、2025年の2,238人から2045年には2,630人へと392人増加しており、増加率は14.9%です。
75歳以上に関するデータは、出生数や若い世代と異なり、新しい統計のほうが、率が高い結果となっています。
伊那市や箕輪町では
伊那市や箕輪町の様子が気になる方もおられるのではないでしょうか。
出生数(0-4歳の増減率)
伊那市
2023年発表データでは、2025年の1,945人から2045年には1,596人へと349人減少しており、減少率は17.9%です。
2018年発表データでは、2025年の2,118人から2045年には1,457人へと661人減少しており、減少率は31.2%です。
箕輪町
2023年発表データでは、2025年の775人から2045年には671人へと104人減少しており、減少率は13.4%です。
2018年発表データでは、2025年の780人から2045年には457人へと323人減少しており、減少率は41.4%です。
出生数に関するデータをみると劇的な改善が伊那市も箕輪町も見られますね。
若い世代(15歳-44歳)
伊那市
2023年発表データでは、2025年の17,140人から2045年には13,541人へと3,599人減少しており、減少率は21.0%です。
2018年発表データでは、2025年の16,154人から2045年には11,310人へと4,844人減少しており、減少率は30.0%です。
箕輪町
2023年発表データでは、2025年の6,867人から2045年には5,435人へと1,432人減少しており、減少率は20.9%です。
2018年発表データでは、2025年の6,159人から2045年には4,100人へと2,059人減少しており、減少率は33.4%です。
若い世代に関するデータも大きく改善傾向が見られています。
75歳以上
伊那市
2023年発表データでは、2025年の12,445人から2045年には12,752人へと307人増加しており、増加率は2.5%です。
2018年発表データでは、2025年の13,140人から2045年には13,112人へと28人減少しており、減少率は0.2%です。
箕輪町
2023年発表データでは、2025年の4,644人から2045年には4,829人へと185人増加しており、増加率は3.8%です。
2018年発表データでは、2025年の4,298人から2045年には4,264人へと34人減少しており、減少率は0.8%です。
2018年のデータでは減少でしたが、2023年のデータでは増加に転じています。
2025年→2045年の各種増減のまとめ
2025年から2045年までの増減について、表にまとめてみました。
表にすると、色々みえてきますが、出生数や若い世代の動きは想定内の方が多いと思います。
出生数 (0-4歳) | 若い世代 (15歳-44歳) | 75歳以上 | |
伊那市 | ▲349人/▲17.9% | ▲3,599人/▲21.0% | 307人/2.5% |
箕輪町 | ▲104人/▲13.4% | ▲1,432人/▲20.9% | 185人/3.8% |
南箕輪村 | ▲47人/▲6.1% | ▲687人/▲12.1% | 576人/20.7% |
一方、75歳以上の動きについては、特に南箕輪村が伊那市や箕輪町より人口規模を考えれば極端に多い576人もの増加が見込まれていることはイメージをつきづらい事象であると感じます。
伊那市や箕輪町は、2045年以降、それほど遅くない時期に75歳以上の人口が減少していくことも想定されます。
一方、南箕輪村は現在より財政運営が厳しい時期が先に控えていますので、20年後を想定した施設整備や政策の立案が求められていると感じます。
