南箕輪村の国民健康保険には、あまり知られていない独自の給付があります。

南箕輪村の国民健康保険には、あまり知られていない独自の給付があります。

それは「精神通院」に対する給付です。

精神疾患で継続的な通院が必要な方には、国の「自立支援医療制度」があります。

通常3割となる医療費の自己負担が原則1割まで軽減され、さらに所得や疾病の状態によって月額の自己負担上限も設定されています。

つまり国の制度だけでも、継続的な精神科通院の負担をかなり抑える仕組みになっています。(厚生労働省)

国民健康保険に限定されますが、ここからさらに市町村独自の給付を行っているところがあります。

長野県国民健康保険団体連合会が公表している給付内容を見ると、県内77市町村のうち精神通院について独自給付を行っている市町村と、行っていない市町村に分かれています。

南箕輪村は実施している側で、自立支援医療を利用した際に残る自己負担分についても給付しています。(長野県国保協会)

ここで一度考えてみる

この制度は、どのくらい効果があるのでしょうか。

もちろん「精神疾患を抱える方の経済的負担を軽くする」という福祉的な意味はあります。

しかし行政が独自に公費を投入する以上、それだけで議論を終わらせず、制度によってどのような効果が生まれているのかを検証する必要もあります。

例えば、人口1,000人当たりの精神科外来患者数、外来医療費、精神疾患による入院患者数、入院日数、入院医療費などを数年間追跡し、給付を行っている自治体と行っていない自治体を比較してみる必要があります。

具体的には、給付を行っている自治体では精神科への外来通院は多いものの、入院する人が少なく、結果として精神疾患全体の医療費が低くなっているといった仮説を検証できます。

自己負担をなくすことで通院を継続しやすくなり、重症化や入院を防いでいる可能性の有無について検証ができます。

独自給付は単なる負担軽減策ではなく、結果的には医療費を抑える「予防的な投資」と評価できるかもしれません。

反対に、給付の有無によって通院継続や入院率などにほとんど違いがないのであれば、別の見方もできます。

市町村がさらに「1割からゼロ」にすることに、どこまで政策効果があるのかという議論は、この制度を守るためにもあってよいと思います。

私は、継続か廃止かを先に決めるより、まずこうした分析をしてみるべきではないかと考えています。

分析できるのか

国保にはKDB(国保データベース)という仕組みがあり、医療費や疾病の状況などを分析できます。長野県も国保料(税)の統一に向けた検討の中でKDBの活用を進めています。一方、結核・精神給付金については「過去の経緯も踏まえ、慎重な検討が必要」としています。(長野県公式サイト)

保険ごとの特徴

もう一つ考えておかなければならないのが会社員などが加入する健康保険との違いです。

協会けんぽなどの健康保険には、南箕輪村国保のように精神通院の自己負担を一律ゼロにする制度は基本的にありません。その一方で、会社員には大きな保障があります。

「傷病手当金」です。

業務外の病気やけがによって働くことができず、給与が支払われない場合、一定の要件を満たせば、標準報酬を基礎とした金額のおおむね3分の2が、支給開始日から通算1年6か月まで支給されます。

もちろん精神疾患によって働けなくなった場合も、要件を満たせば対象となります。

一方、市町村国保では傷病手当金は法律上「任意給付」であり、一般的な市町村国保では恒常的な制度として実施されていません。

国保には精神通院の自己負担をさらに軽減している市町村がある。一方、会社員の健康保険には傷病手当金という「働けなくなったときの所得保障」がある。

同じ医療保険でも、保障の形がかなり違うわけです。

考え方

そう考えると「社会保険にはないから国保の精神通院給付をやめるべきだ」と単純に考えるのも違いますし「困っている人への支援だから当然続けるべきだ」と結論を決めてしまうのも違うように思います。

精神疾患の場合、治療費だけでなく、働けなくなることによる所得減少も生活に大きな影響を与えます。

だからこそ、医療費の自己負担をゼロにすることが最も効果的な支援なのか。それによって通院継続や重症化防止という効果が実際に生まれているのか。

一度、数字で確かめてみる価値があると思います。

将来的には保険料水準の統一の動きがある。

国民健康保険については、今後県内で保険料水準の統一に向かっていく動きが加速しています。

保険料を統一していく一方で、市町村独自の給付をどこまで残していくのか。これは避けて通れない議論です。

ただ、制度が違っている今だからこそ比較できることがあります。

「昔からやってきたから続ける」「他ではやっていないからやめる」ではなく、実際にどのような効果が出ているのかを調べてから判断する。

国保の統一が進む前に、一度やっておくべき検証ではないかと思っています。

結核への独自給付は?

なお、長野県内では結核についても独自給付を行っている市町村があります。ただし、結核は対象者数そのものが少なく、市町村単位で医療効果を比較することは難しいため、こちらは給付額や対象人数、制度維持に必要な事務などを確認した上で判断する方が現実的だと思います。