長野県から令和8年度の「国民健康保険事業費納付金」の算定結果が公表されました。
難しい制度ですが、南箕輪村にとってどうなのかという視点と今後進められる保険料(税)水準の統一についての見通しを解説します。
南箕輪村は約3億2,900万円を県へ納付
国民健康保険は平成30年度から都道府県が財政運営の主体となり、県全体で医療費を支え、市町村は県から割り当てられた「国保事業費納付金」を納める仕組みになっています。
令和8年度は長野県全体の納付金は約495億円で、前年度の487億円から約8億円、1.6%増加しており、微増傾向にあります。
一方、県内の国保加入者の実数は減少しているため、1人当たりでは13万3,565円から14万469円と5.1%も増えています。
医療費そのものは1,727億円から1,715億円へ減少しているにもかかわらず、前期高齢者交付金や決算剰余金の減少、さらに令和8年度から始まった「子ども・子育て支援金」などによって、加入者1人当たりの負担は増えています。
南箕輪村の令和8年度納付金は、3億2,935万4,904円で、1人当たりでは、令和7年度の13万3,091円 から令和8年度は13万8,617円となり、4.15%増加しました。
南箕輪村は、県平均の14万469円より1,852円低く、上昇率も県平均5.17%より約1ポイント低くなっています。
南箕輪村にとって重要なのが「医療費の共同負担化」
ここから保険料(税)水準の統一の話になります。
現在、納付金には各市町村の医療費水準がある程度反映されており、具体には医療費が多い自治体は負担が重くなり、少ない自治体は軽くなります。
健康づくりや医療費適正化に取り組んだ自治体の努力が反映される仕組みとなっています。
ところが長野県では、市町村ごとの医療費の違いを納付金に反映する仕組みを徐々に縮小しており、令和8年度は、南箕輪村単独の医療費水準ではなく、伊那市や駒ヶ根市、箕輪町などを含む「上伊那医療圏」全体の医療費水準に6分の5まで近づけて計算しているため、すでに「南箕輪村だけで負担する」仕組みから「上伊那地域全体で支える」仕組みへ大きく移行しています。
具体的な数字で説明すると、南箕輪村の1人当たり納付金は13万8,617円ですが、本来は13万8,376円であり241円、0.17%調整が行われています。
2030年度に「県内どこでも同じ保険税」になる?わけではない
長野県は令和12年度、2030年度までに納付金ベースの統一を目指しています。
納付金ベースの統一とは、市町村ごとの医療費水準を納付金計算に反映させない仕組みです。
言い換えると、南箕輪村で医療費が多かった、少なかったという違いは、県へ納める金額に基本的には反映しない、ということです。
その先にあるのが「完全統一」です。
完全統一になると、同じ所得・同じ世帯構成なら、長野市でも松本市でも南箕輪村でも基本的に同じ保険料という世界になります。
しかし、これはどうでしょうか。
完全統一は難しい
令和8年度の市町村標準保険料率を見るだけでも、その難しさが分かります。
南箕輪村の医療分所得割率は6.56%ですが、県内ではかなり幅があります。また、人間ドック助成、保健事業、減免制度、収納率、基金の保有状況なども77市町村で異なります。 (長野県公式サイト)
完全統一するなら、単に税率をそろえるだけでは済みません。
「保険税は同じなのに、A市では人間ドックに手厚い補助があり、B村にはない」などの事象がいたるところで発生し公平ではないためです。
そのため県では、保険料だけでなく、人間ドック・脳ドック助成、特定健診、葬祭費、保険料減免基準などについても統一に向けた検討を進めています。
南箕輪村から見ると「統一=必ず得」でも「必ず損」でもない
では南箕輪村にとって統一は良いのでしょうか。
小規模な保険者では、人工透析など高額な医療が数件発生しただけでも、1人当たり医療費が大きく変動します。
県単位で負担を平準化すれば、このリスクを77市町村で支えることができます。人口規模の小さい自治体にとって、これは大きなメリットです。国も、統一によって高額医療費による年度間の保険料変動を抑えられるとしています。
一方で問題もあります。
医療費を抑え、健診や健康づくりに力を入れても、それが直接自分の自治体の保険料に反映されにくくなる可能性があります。
「地域で健康づくりを頑張るメリットを、制度の中でどう残すのか」という課題が生じ、ここは南箕輪村としても重要な論点だと思います。
2030年はゴールではない
2030年度については、「長野県内の国保税が全部同じになる年」ではなく、「医療費を県全体で負担する仕組みがほぼ完成する年」となります。
南箕輪村の令和8年度の数字を見る限り、二次医療圏への統一による影響は現在のところ小さく、県平均より1人当たり納付金も低い状況です。
県単位化による安定性を確保しながら、健康づくりを頑張った自治体と住民が報われる仕組みをどう残すのかが、これからの国民健康保険を考えるうえで最も大切な論点ではないかと思います。
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