いなあいネットとは何か

伊那市と南箕輪村に根差した有線放送事業の「いなあいネット」。

全国では、有線放送事業が縮小・廃止へと向かう中で、異なる歩みを見せていることをみなさんご存知でしょうか。

単なる音声放送にとどまらず、暮らしを支える地域基盤へと進化していますので、その事例を交えて紹介していきます。

伊那市有線放送農業協同組合(通称:いなあいネット)

いなあいネットは、伊那市有線放送農業協同組合が運営し、伊那市と南箕輪村を管内としています。かつては家庭に放送を届ける仕組みが中心でしたが、現在では通信・防災・生活支援を含めた総合的なサービスへと広がっております。

組合員数

組合員数は、昭和47年度の7,855世帯から、令和7年度には4,742世帯(伊那市4,333世帯、南箕輪村409世帯)へと減少しています。数字だけを見れば縮小に映りますが、その内実はむしろ変化の途上にあります。利用者の減少を前提としながらも、サービスの質と役割を再構築している点が特徴です。

料金体系

料金体系は分かりやすく、長期利用を前提に設計されています。新規加入の設備負担金は55,000円ですが、3年以上の継続利用で44,000円が割引され、実質11,000円となります。

月額利用料は、電話やインターネットを含むフルサービスが1,980円、放送のみであれば1,430円です。組合員同士の通話は無料であり、さらに0番・9番発信による無料通話サービスも用意されています。

特殊詐欺などへの対応

こうした利便性に加え、見逃せないのが「安心」を支える機能です。特殊詐欺対策としての効果は非常に大きく、固定網ならではの仕組みが高齢世帯を守る役割を果たしています。

また、予測震度3以上で自動的に大音量放送が流れる緊急地震速報、停電時でも受信可能な放送機能、さらには県外通話が可能な点など、災害時における強さは際立っています。

有線の価値

無線通信が主流となった現代において、有線という仕組みは一見すると時代の流れから外れているようにも映ります。しかし、災害時における通信の確実性という観点では、有線の価値はむしろ高まっております。複数の通信手段を持つことは、地域全体の強靭性を高めることにつながります。

LoRaWAN(省電力長距離無線通信技術)

さらに注目すべきは、先進技術の導入です。LoRaWAN(省電力長距離無線通信技術)を活用したセンサーは、すでに熊の檻罠に設置され、捕獲効率の向上に寄与しています。今後は農業や防災、インフラ管理などへの展開も期待されており、通信事業の枠を超えた地域課題解決の基盤へと進化しています。

どのような事業を展開しているか

現在の主な取り組みとしては、光回線エリアの拡大と加入促進、ADSLインターネットの活用、災害に備えた情報発信の強化、地域の魅力を発信する番組制作、農業や健康、暮らしに役立つ放送の提供などが挙げられます。加えて、CM放送の活用促進、放送設備の更新、LPWA技術の実証、パソコンや周辺機器のトラブルサポート、設備の保守保全など、多岐にわたる事業を展開しています。
また、伊那市や南箕輪村、JA上伊那、信州大学、各種団体との連携により、単独では成し得ない価値を生み出している点も大きな特徴です。

まとめ

いなあいネットは、単なる通信サービスではございません。防災インフラであり、地域情報の拠点であり、そして住民同士をつなぐ基盤です。組合員数は減少しているものの、その役割はむしろ広がりを見せています。

地域づくりにおいて重要なのは、新しいものを取り入れることだけではなく、既にある仕組みをどのように進化させるかにあります。いなあいネットは、その実践例といえる存在です。

情報があふれる時代だからこそ、1次情報の発信は価値が今後高まっていくと感じますし、幸せに暮らすには嘘か誠か疑わしい、そして不穏な2次情報より1次情報を自分の周りに埋めておくことのほうが大切と感じます。

いなあいネットは、地域の暮らしを静かに、そして確実に支え続けています。この価値をどう活かしていくかが、これからの地域の姿を左右するのではないでしょうか。