令和8年5月12日、東京・砂防会館で開催された「地方を守る会」の総会に参加しました。名前だけを聞くと、少し抽象的に感じる団体です。しかし、この会が扱っているテーマは、大変重要です。
災害が起きたとき、誰が道路を開くのか。誰が重機を動かし、誰が被災地に水や医療を届ける道を確保するのか。
その時、国、県、市町村の役割分担はどうあるべきなのか。
「地方を守る会」は、こうした問いに対し、基礎自治体、つまり市町村の立場から考え、提言していくための会です。
会の目的
会の目的は、基礎自治体への権限移譲、自治権の拡充、国と基礎自治体との適切な関係づくり、そして会員相互の情報共有と政策立案能力の向上にあります。平成24年3月3日に設立総会が行われた際にも、基礎自治体への権限移譲、地方振興、災害など非常時における国民生活の安全安心を担保できる国と基礎自治体の関係が大きな柱として掲げられていました。
現在、568名の首長が賛同し、南箕輪村も参画しています。
知事会の方針に対する踏み絵
地方を守る会では、地方分権という言葉のもとで、国の地方出先機関、とくに地方整備局のような実動部隊を廃止し、県や広域連合に移管する全国知事会の方針には慎重であるべきだ、という立場を明確にしてきました。
地方分権という言葉の落とし穴
「地方分権」と聞くと、多くの方はよい印象を持つと思います。 国の押しつけではなく、自治体が主体的に判断する。これは当然、大切な考え方です。
しかし、問題はその先です。
地方分権の名のもとに、国の地方出先機関をなくし、その機能を広域連合や道州制的な枠組みに移せば、本当に地方は強くなるのでしょうか。
地方を守る会が問題提起してきたのは、まさにこの点です。
命令系統が一か所にあることが大切であり、東日本大震災の時にも東北地方整備局が果たした「くしの歯作戦」の役割は高く評価されています。
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立谷秀清氏の講演から見えた「地方整備局」の意味
今回、前相馬市長の立谷秀清氏から、地方を守る会の設立経緯や、東日本大震災時の経験を踏まえたお話を伺いました。
立谷氏のお話で特に印象に残ったのは、「震災の苦労の先に地方整備局が見えてくる」という趣旨の言葉です。
東日本大震災では、3分30秒にも及ぶ大きな揺れが続きました。
その直後、立谷相馬市長は大きく二つの指示を出されました。
- 内陸部の消防団は、倒壊家屋への対応と救助に当たること。
- 海岸部の消防団は、津波に備え、住民を高台へ避難させること。
その中で、消防団員10名が帰らぬ人となりました。この事実は、行政に関わる者として、胸に刻まなければならないものです。
一方で、海岸部の津波被害想定エリアには約5,400人がいた中、消防団の懸命な避難誘導により、約5,000人弱が救われたとのお話もありました。
相馬市では、明治以降、大きな津波被害の経験はなかったそうですが、災害対応の急性期は、地元消防団の現場力が一番に発揮されたとのことです。
そして、中期的な復旧、道路啓開、物資輸送、医療支援、生活再建に向けた動きになると、地方整備局の存在が極めて大きくなるとのことです。
原発事故の影響で物資が届かない中、医薬品確保のために東京まで行くことができたのは、道路が早期に復旧したからだと説明しています。さらに、災害対応や地域づくりは地方政府である自治体の役割である一方、その最大の支援者として国の力を使うことが必要だとも述べています。
次の死者を出さない
立谷氏は「次の死者を出さない」ことを目標にしてきたと述べています。
立谷氏のお話でもう一つ重かったのは、災害後に守るべき命は、津波や地震の直後の命だけではないという点です。
- 災害死
- 災害関連死
- 経済的に追い詰められたことによる自死
- 孤独死
災害対策とは、最初の被害を減らすだけではありません。
その後に続く死を、いかに防ぐか。 これが行政の大きな責任です。
避難所で体調を崩す方がいる。 人工透析には大量の水が必要になる。 高齢者、障がいのある方、持病のある方、移動が難しい方をどう守るか。 事業を失った方、仕事を失った方が、生活再建に向けて前を向けるように、どう支えるか。
立谷氏は、経済的に追い込まれる方を守るため、弁護士との協定が有効だったという趣旨のお話もされました。
まとめ
今回の総会と講演の焦点は、広域連合、県、道州制的な枠組みと、地方整備局の存続をめぐる問題でした。
広域連合や道州制的な枠組みに国の出先機関の機能を移した場合、命令系統は本当に明確になるのか。
県境を越える大災害で、迅速な判断ができるのか。
構成団体の意見調整に時間がかからないのか。
この点は、制度をつくる側が最も重く考えなければなりません。
東日本大震災では、東北地方整備局が「くしの歯作戦」により、内陸側から太平洋沿岸へ向かう道路啓開を進めました。国土交通省東北地方整備局の記録では、震災翌日の3月12日には11ルートが開き、1週間で太平洋岸の97%まで到達できたとされています。また、TEC-FORCEが派遣され、通信機械などの災害対策機械も自治体に貸し出されました。
基礎自治体は「地方政府」であることや電力会社との関係
立谷氏は、基礎自治体は地方政府として頑張らなければならないことや電力会社の関係のお話もいただきました。
ここでは割愛いたします。
貴重な講演ありがとうございました。
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