南箕輪村議会一般質問(令和7年第4回)太田篤己議員

令和7年第4回議会定例会における、太田篤己議員の一般質問です。

1 農業振興政策について

(1)圃場の集約化・大規模化の現状はどうなっているか。今後どのように進めていくか。

 農業経営者が経営規模の拡大や農作業の効率化を図るには、農地を借り受けたり耕作する農地をまとめたりすることが非常に有効であります。

 農地を貸借をする方法として、以前は農業経営基盤強化促進法による貸し手と借り手の契約方法、いわゆる「利用権による貸借」が一般的でありましたが、法律の改正により、令和7年度から「利用権による貸借」による新たな契約は廃止となり、農地を貸借する場合は農地法第3条による貸借か、議員ご指摘の通りの「農地中間管理事業」による貸借での手続きのいずれかとなりました。

 令和6年度末時点の、認定農業者などの中心的経営体への「利用権による貸借」「農地中間管理事業」などによる農地の集積面積は約496haで農地全体の55%となっています。

 そのうち「農地中間管理事業」は約66haで約7%となっています。

 農業振興や農地の有効利用を進めていくためには農地の集積が有効であることから、今回策定する村の第6次総合計画の中で、5年後の担い手の集積率を60%と設定しています。

 また、先日も農政係と農業委員会合同で地域計画の話し合いを認定農業者などを参集して行いましたが、集積が進んでいく姿が見え始めていますので、引き続き農業委員会とも連携を取りながら、農地の集積化を推進していきたいと思います。

 一方、圃場の集約化につきまして、現在の農業機械に即した大規模な圃場の整備はこれからの農業には必要になってくるものだと考えます。

 村内の農業形態としましては、大きく括りますと、上伊那郡西天竜土地改良区と上伊那郡伊那土地改良区に属する水田エリア、西天竜用水路以西の西部地域の畑作エリアの括りに分けられます。

 特に受益面積の大きい西天竜土地改良区の水田地域では、過去に大泉川南と久保富士塚の地域で圃場整備を実施しており、最近では久保地区で新たな研究組織が立ち上がっています。

 圃場整備を実施するには、地元の皆様や地権者の皆様の理解と合意形成が必須で、通常ですと地元の負担金もかかってくるなど、ハードルの高さが集約化が難しい要因となっているかと思います。

 過去と同様の答弁となりますが、村としましては地元での動きがあれば、国や県とも連携をして、効果的な補助事業を研究し、必要な助言、支援に取り組んでいきたいと思います。

(2)現状は米作主体となっているが、扇状地で狭小な農地が多い当地域では、多様な作物の栽培が向いていると思われる。今後の多様化戦略は。

 本村の農業の主体は水稲であり、その中心は、西天竜土地改良区による圃場整備が行われた水田地域であります。

 これらの地域では、まっくんファームをはじめとする大規模な担い手農家が、大型の農業用機械を活用し、水稲に加え、大豆、そば、小麦などを組み合わせながら、効率的な営農を行っております。

 一方で、本村は全体としてなだらかな扇状地に位置しており、圃場条件が整っていない狭小な農地も数多く存在しております。

 こうした農地においては、従来から農家の皆さんが、手作業や管理機など比較的小規模な農業用機械を用い、露地で自給的作物を中心に作付けを行うとともに、草刈りなどによる保全管理を続けていただいている状況であります。

 作付け作物の多様化につきましては、村では「風の村米だより」以外の作物について、南箕輪村農業再生協議会において振興作物を定めております。

 現在は、アスパラガス、スイートコーン、白ねぎ、ブロッコリーがこれに該当し、いずれも国の交付金対象作物となっております。

 これらの作物を検討する農業再生協議会幹事会には、JA上伊那の営農専門職員や、県の支援センターの技術者など、村職員にはいない専門的知見を有する方々が参画しており、技術的観点や市場動向を踏まえた協議の中で、地域として推進すべき作物を決定しております。

 したがいまして、近年の気候変動への対応や、狭小な農地条件に適した作物の選定、市場ニーズを踏まえた作付け体系の見直しにつきましては、今後の農業再生協議会幹事会における重要な検討課題として位置づけてまいりたいと考えております。

 また、村では地域計画を策定し、毎年、目標地図の見直しを行いながら、耕作者ごとに農地の集約・整理を進めていくこととしております。その前段階として、「このエリアではこの作物を中心に耕作してはどうか」といった形で、まずは作物のエリア設定を農業者の皆さん自身が考えていくという手法も有効であると考えております。

 今後も、圃場条件、担い手の状況、作物特性、市場動向など、さまざまな視点から検討を重ね、本村農業の持続的な発展につなげてまいりたいと考えております。

(3)食料自給率向上、地産地消振興の点から見ても農業の担い手不足は深刻な課題である。営農の一形態として、一定規模以上の法人経営などが考えられるが、営農の組織化について村は何らかの施策、支援を考えているか。

 村の農業を守り、村内の農地を活用して維持しているのは、比較的小規模な自給的農家から認定農業者や法人などの大規模農家までその地域や農地の形状、立地に合わせて様々であります。

 議員ご指摘の通り、農地を活用して維持していくために有効な手段として、農業経営者を法人・組織化して、地域の中心的担い手農業経営体として大規模に営農をすることもその一つであります。

 その最たる法人が農事組合法人である「まっくんファーム」であり、村の農業者約550人が組合員となり村の農業の中心的な役割を担っていただいています。

 南箕輪村農業機械導入事業補助金を通じて支援をしています。

 しかしながら、まっくんファームも高齢化が進み、人材確保が大きな課題となっているのが現状です。

 この点につきまして、1月に村と農業委員会がまっくんファームと意見交換する場を設定しました。

 まっくんファームからは理事と中心的なオペレーターが参加し、意見交換を行うことになります。

 ここでは特に人的支援について意見交換を行い、出た意見の中から村が行うべき支援を本格的に検討し実施していきたいと思います。

 また、現在「農地基本台帳」に掲載されている法人及び団体の組織数(賃貸借が可能)は村内で21経営体となっており、農地を所有できる資格のある法人及び組織、いわゆる農地所有適格法人の数(賃貸借+所有が可能)は13経営体となっています。

 そのような法人等への支援につきましては、村では金銭的な支援は現状ありませんが、国や県の補助金の案内、申請書などの書類作成の支援を行っており、実際毎年のように補助金を受ける法人が出ております。

 国や県の各種農業者向けの補助金は大規模農業経営体が交付に有利となる採択基準となっているケースが多くみられるため、このような支援を継続していきたいと思います。

 また、就農規模の移住者へ対する支援ですが、「新規就農相談カード」を用いて、農地確保やどのような農業を行いたいかを聞き取り、JA、県支援センター、農業委員会などと一緒にサポートを行っています。また、ケースによっては移住相談窓口を案内するなど、横断的な対応にも心がけていますので、このような対応を今後も継続していきたいと思います。

(4)農福連携は、障がい者の社会参画を実現するだけではなく、新たな働き手の確保につながる取り組みである。村の取組や今後の方針は。

 農福連携は、障がいのある方の社会参画を促進する取り組みであると同時に、農業分野における新たな働き手の確保や、耕作放棄地の解消といった課題にも寄与する重要な施策であると認識しております。

 農業には土づくり、種まき、草取り、収穫、運搬、袋詰めなど多様な作業があり、障がいの特性に応じて作業を切り分けやすい分野であるとされています。その一方で、障がいのある方が継続的に就労するためには、個々の特性に合った作業内容の調整や、長く関われる仕事の組み立てが不可欠であります。

 現在、村内においては、障がい者就労支援事業所が、知り合いのイチゴ農家に出向いて継続的に作業を行っている事例や、単発で野菜の収穫作業に従事した事例などが見られますが、いずれも村が直接関与したものではなく、個々の関係性を通じて就労につながったものであります。

 村としては、障がい者就労に関する専門的知識や、農業者と障がい者をつなぐノウハウについては、現時点では十分とは言えない状況にあります。

 なお、長野県セルプセンター協議会では、企業や団体、行政からの業務を県内の障害福祉サービス事業所につなぐ仕組みを有しており、農福連携にも取り組んでいることから、こうした既存の支援機関を活用することも一つの有効な手段であると考えております。

 村といたしましては、今後、農業分野においては営農センターを中心とした関係団体の総会や、先ほど申し上げましたまっくんファームとの意見交換の場などを通じて、農業者側の意向を把握してまいります。

 また、障がい福祉分野においては、上伊那圏域地域自立支援協議会などの機会を活用し、就労支援事業所の考えや課題を確認することから取り組みを始めたいと考えております。

 こうした意向把握を重ねながら、関係機関と連携し、本村の実情に即した農福連携の在り方について、段階的に検討を進めてまいります。

2 森林資源の有効活用について

 (1)本村には大芝高原の森を初め、蔵鹿山、御射山等(旧生産森林組合所有林)、さらには飛地の山林があり、豊かな森林資源を有している。長野県には、「県産材利用促進条例」の中で①林業、木材産業等持続可能な産業として振興。②地域の森林資源を有効活用する取組を通じて、多様な産業発展を図り、地域内の経済循環活性化。③脱炭素化のための取組を効果的に推進すると謳っている。
 本村では、赤松を給食センターの建築材に利用するなどの取組もみられるが、県条例の基本理念を実現するためには、国・県交付金等も活用できる長期的な取組が必要となる。
 今後の森林資源活用の考えは。

 村では、昨年度「大芝高原森林づくり実施計画」を策定し、大芝高原を皮切りに、森林整備事業を本格的に開始したところでございます。本計画では、森林整備のみならず、「森をつかう」という視点から、森林資源の有効活用に向けた施策も整理いたしました。

 現状の実績では、議員からご紹介のあった学校給食センターのほか、小中学校の学習机天板やファーストトイ、役場のカウンター、保育園のおままごとセット、南箕輪中学校音楽室の下駄箱などが挙げられます。

 飛地に目を向けますと、蔵鹿山(ぞうろくやま)、御射山(みさやま)をはじめ、森林資源は伐期を迎えております。

 今年度の村の3カ年実施計画でもお示ししておりますとおり、令和9年度より飛地の伐採を開始し、令和10年度からは飛地の調査計画の策定に取り組む意向でございます。

 今後の、森林資源の活用について申し上げます。

 まず、価値の低い材につきましては、大芝の湯で稼働を予定している熱利用専用バイオマスボイラーにより、木質チップとして利用しますので、持続的で安定した資源活用の一つとして位置付けてまいります。

 一方、価値の高い材につきましては、今年度については、数百万円規模で市場に出材する予定でございます。

 県では「県産材利用促進条例」を踏まえ、「長野県内の建築物等における県産材利用方針」について、今月のパブリックコメントを経て、来年1月に予定される県産材利用促進連絡会議で見直される内容が決定するとのことです。

 具体的には、県による県産材の率先利用に関して、条例の趣旨に沿って、県産材利用が、「努める」「原則として」といったあいまいな表現を削除することにより明確となるよう見直されます。

 加えて、民間事業者等が整備する建築物への県産材利用に係る項目を追加し、建築物全般における県産材利用促進の取組を明確化や産地づくり、販路拡大等条例に基づく新規項目を追加し建築物以外の分野における県産材の利用促進や脱炭素社会に向けた取組などを明確化されます。

 こうした動きの中で、県レベルで定常的な木材の活用につながるようマネジメントが進むことを期待しております。

 村としても、非定常的な事業、例えば新たな公共施設の建設等に際しては、積極的に売り込みを行っております。

 現段階では詳細を申し上げられませんが、具体的な活用に結びついた案件も生じております。

 発表可能な段階となりましたら、改めてお知らせいたします。過去には、諏訪大社の修正材として採用された事例もございました。

 しかしながら、こうした個別営業のみで利用先を確保し続けるには、公務の立場上も専門ではなく、限界があるのも事実でございます。

 現在の制度では、公共施設改修への活用について補助事業の対象範囲や建築基準法の内装制限などが存在し、十分な活用が難しい側面もございます。

 しかし、森林資源を持続可能なかたちで生かしていくためには、中長期的な視点に立った計画づくりと、国・県の交付金等を戦略的に活用することが不可欠であると考えております。これらの点を踏まえつつ、今後の活用方法を検討してまいります。

 森林資源は、村民の皆さまにとって大切な財産でございます。国・県の制度を上手く取り入れながら、村民の皆さまに利益として還元できる仕組みを整えてまいりたいと存じます。

(2)森林資源活用のためには、林業に携わる人材が不可欠である。先般、大芝高原において上伊那農業高校「くらしのマネジメント課里山コース」の間伐実習の視察の際には、女子を含む多くの生徒が見られ、林業の将来に心強い思いを感じた。
林業、林産業人材育成に向け、村としての取組・支援をしていく考えはあるか。

 林業・林産業人材育成に向け、村としてどのような取組や支援を進めていく考えがあるのか、とのご質問でございます。

 まず、長野県全体では、今後、段階的に増加が見込まれる素材生産や再造林、その後の初期保育に的確に対応するため、素材生産と保育の双方に従事する人材の確保が重要であるとしております。

 県では、就業希望者の裾野拡大から、就職、就業後の定着促進に至るまで、各段階に応じた体系的かつ総合的な支援を講じ、新規就業者を年間120人、令和9年には林業就業者1,600人を確保することを目指すと掲げております。

 今年3月には、信州の森林で働く方・働きたい方のためのポータルサイト「ながの森ジョブ.BASE」も開設されました。

 また、木曽谷・伊那谷フォレストバレーでは、森林・林業に関する教育機関や試験研究機関が比較的近距離に集積している利点を生かし、全国から学びや起業を志す人々が集い、多様なコミュニティが形成される取り組みが進められております。

 こうした広域的な枠組みでの人材育成は、大変有効であると考えております。

 一方で、村としての具体的な取組についてでございます。

 村内の現状に目を向けますと、林業施業を専業とする事業者は現在おりません。建設業者のうち、林業関連作業について業者指名願を提出しているのは、2社(堀建設、原建設)のみでございます。

 また、林業従事者数の推移でありますが、村政要覧の数字を申し上げますと平成17年9人、平成22年10年、平成27年17人、令和2年14人であります。

 平均年齢と新規就業者のデータを持ち合わせておりません。

 参考として、長野県林業統計書によりますと、長野県全体では令和2年度の数字で1,449人であります。

 年齢構成では39歳以下が463人、40代が393人、50代が288人、60代が216人、70歳以上が89人となっています。

 そうした中、村では令和7年度から初めて「地域林政アドバイザー」との契約を開始いたしました。

 近年において、役場が林業分野に専従的に関わる人材と契約したのは初めての取り組みであり、村の林政を進めるうえで大きな一歩であると受け止めております。

 さらに、林業振興という観点からは、本村の森林状況を踏まえ、村からの委託費も年々増加しております。

 令和元年 14,700,000円、17,000,000円、18,100,000円、19,900,000円
 令和5年 33,500,000円、令和6年 39,500,000円

 このように、村として直接的な「仕事づくり」を進めていくことも、重要な視点であると考えております。