飛び地に人が住み始めたらどうなるのか?

南箕輪村には、ちょっと変わった特徴があります。

村の面積は40.99平方キロメートルですが、そのうち約半分は、伊那市西箕輪のさらに西側にある「飛び地」です。

経ヶ岳などを含む山岳・森林地帯で、現在ここに住んでいる人はいません。

つまり、南箕輪村は「人が住んでいる村」と「人が住んでいない村」が、ほぼ半分ずつある自治体ともいえます。

この飛び地に人が住み始めたら?

例えば、山の中に10世帯、20人くらいの小さな集落ができたとします。

「人口が20人増えるならいいじゃないか」と思いますが、行政側から見ると、なかなか大変です。

まず道路です。住むとなれば一年中通れる道路が必要になり、舗装や補修、冬には除雪も必要になります。さらに水道、排水、ごみ収集、消防、救急、防災、通信など、「人が住む」というだけで整えなくてはならない事柄が少なくありません。

仮に10世帯程度のために道路改良が必要となれば、条件によっては数千万円から億単位になる可能性があります。水道を何kmも延ばせばさらに高額になります。

一方、井戸や合併処理浄化槽など各戸対応にして初期投資を抑えたとしても、道路維持・除雪、ごみ収集、消防・救急、防災などは残ります。

そして子どもが生まれた場合は保育園や学校も課題となります。

コストは?

とりわけ大ざっぱな試算ですが、既存道路を最大限利用し、水道を延伸せず井戸や浄化槽を使う比較的安いケースでも、10世帯のための初期投資は数千万円規模、その後も行政サービスのために年間数百万円程度が必要になる可能性があります。

もちろん、これは実際に積算した数字ではありません。

南箕輪村の強みに反する?

現在の南箕輪村の本体部分は約19平方キロメートルの比較的平坦な場所に人口が集中しています。村自身も、このコンパクトさが効率的なインフラ整備や健全財政につながっていると説明しています。

飛び地に住宅が点々と建つことは、この南箕輪村の強みとは反対方向に進むことになります。

いいこともある?

例えば、林業をする人が住んだり、森林を管理する人が住んだりなど、登山や自然体験の拠点にすることは可能性として考えられます。

いざという時には現代文明の力を借りながらも、日常は電気やガス、IT、さらには生成AIからも距離を置く。そんな明確なコンセプトを持った暮らしの場とすることも魅力的です。

一方で、研究者などが一定期間滞在したり、太陽光や蓄電池、井戸などを活用したオフグリッド住宅を整備したりするなど、これまでとは違った暮らし方を試す場所としての可能性もあります。

村の計画

村の第6次総合計画では、飛び地にはまだ未整備の森林が多く残っており、新たな森林管理方法などを検討していくこととしています。

つまり、「住宅地をもう一つつくる」のではなく、人が住むことによって山を管理するという考え方なら、約20平方キロメートルもの飛び地が新しい可能性を持つかもしれません。