2026年5月27日、東京農業大学世田谷キャンパスで開催されたシンポジウム「高齢者のウェルビーイングを支える森林空間利用」に参加してきました。
このシンポジウムは、東京農業大学森林総合科学科の上原巌教授によるもので、高齢者が森林空間を利用する際の効果や、安心して森に親しむための工夫について考える内容でした。
高齢者にとって、森はなぜ大切なのか
高齢になると、若い頃に比べて自律神経のバランスが乱れやすくなります。自律神経とは、心臓の動き、血圧、呼吸、体温、消化などを無意識のうちに調整している神経です。
活動するときに働く交感神経と、休むときに働く副交感神経があります。高齢期には、この切り替えがうまくいきにくくなることがあります。
その結果、疲れが抜けにくい、眠りが浅い、血圧が安定しにくい、気分が落ち着かないといった状態につながることがあります。また、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが高くなりやすく、免疫機能も低下しやすいとされています。
こうした中で、森林空間を活用した散策や軽い活動には、副交感神経を高め、コルチゾールを下げ、免疫系を活性化する効果が期待されることが、これまでの研究でも示されてきています。
森林総合研究所の研究でも、森林浴がNK細胞など免疫機能に関わる指標を高め、ストレスホルモンを低下させたことが報告されています。
森林浴は薬ではありません。
病気を直接治すものではありません。しかし、日々の暮らしの中で、無理なく心身を整える方法としては、大きな可能性があると感じました。
森林浴は、体の中で何を起こしているのか
森林浴というと、単に「気持ちがいい」という印象を持つ方が多いと思います。
しかし、今回の学びでは、その「気持ちがいい」という感覚の裏側に、体の中の変化があることを改めて確認しました。
森からの刺激は体を緊張状態から休息状態へと移していく働きがあります。副交感神経が優位になると、心拍数が落ち着き、呼吸も深くなり、体全体がリラックスしやすくなります。すると、脳から体への指令も変わり、ストレスホルモンであるコルチゾールが下がりやすくなります。
コルチゾールが過剰な状態が続くと、眠り、血圧、気分、免疫などに影響が出やすくなります。逆に、森の中で心身が落ち着くことにより、睡眠の質が上がる、気分が安定する、血圧が下がりやすくなるといった効果が期待されます。
長野県の赤沢自然休養林などで行われた研究でも、森林での歩行は都市部での歩行と比べ、血清コルチゾール濃度や尿中アドレナリン濃度を低下させたことが報告されています。
生活習慣病予防との関係
森林浴は、食事・運動・睡眠に加える新しい健康づくりの選択肢になり得ます。森の中を無理なく歩くことで、心拍数や血圧が落ち着き、ストレス反応が和らぐことが期待されます。
また、糖尿病や高血圧、肥満、メタボリックシンドロームなどと関係するアディポネクチンにも注目されています。森林浴は病気を治すものではありませんが、「予防する」「悪化を防ぐ」「日々の状態を整える」という意味で、高齢者の健康づくりと相性がよいと感じました。
高齢者が森に入るために必要なもの
高齢者が安心して森を歩くためには、道の整備だけでは足りません。足元の安全、休憩場所、トイレ、駐車場からの距離、緊急時の連絡手段など、まずは安心して歩ける環境が必要です。
加えて大切なのが、人的環境です。案内する人が急がせず、知識を一方的に話しすぎず、体力差に配慮できること。「もう少し歩けますか」よりも、「ここで休みましょうか」と自然に言える人材が、森と人をつなぐ役割を果たします。
「また来たい」と思える森へ
高齢者の森林活用で大切なのは、長い距離を歩くことではありません。帰るときに「疲れた」ではなく、「気持ちよかった」「また来たい」と思えることです。
その感覚が次の外出につながり、人との交流につながり、日々の生活リズムにもつながります。森林空間の活用は、健康づくりであると同時に、孤立を防ぐ取り組みにもなり得ます。
南箕輪村で考えられること
南箕輪村には、信州大学農学部、大芝高原セラピーロードという強みがあります。今後は、歩く距離よりも、休む場所、景色を見る場所、香りを感じる場所を大切にした、高齢者向けの短時間森林散策も考えられます。
健康を支える地域資源として活用していくことが重要だと感じました。無理のない森林散策は、高齢者が外に出るきっかけになり、人と会うきっかけになり、自分の体と心を整えるきっかけになります。
早朝にコーヒーや茶を提供してもいいですね。
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